わずか40秒で姿を消した4歳児──松岡伸矢くん失踪事件の謎

「子どもの姿が消えた後の静かな住宅前、異様な空気感が漂うイメージ画像
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発生から36年、いまだ手がかりなし

1989年3月7日。徳島県美馬郡貞光町(現・つるぎ町)で、わずか4歳の男の子が忽然と姿を消した。名前は松岡伸矢(まつおか しんや)くん。

当時の伸矢くんは、身長約110cmの痩せ型で、左利き。右眉上には小さな傷跡があり、記憶力も良く、住所や電話番号、家族の名前も自分で言えるほどしっかりした性格だったという。

その日、彼は家族とともに祖母の葬儀のため親戚宅に宿泊しており、朝になってから親戚宅前で父、姉、弟、従姉妹らと共に散歩に出かけた。散歩といっても、家の前を数分うろうろした程度で、遠くへは行っていない。

午前8時15分ごろ、父親が弟を母親に預けるため家に戻った。時間にしてわずか40秒ほど。しかし玄関から再び出た瞬間、伸矢くんの姿が忽然と消えていた。

その後、家族で付近を必死に探し回ったが見つからず、昼過ぎに警察へ通報。

すぐに大規模な捜索が始まり、地元警察の他、警察犬、消防団、地域住民を含めた約100人規模で山狩りが行われた。

にもかかわらず、事件発生から3ヶ月間、伸矢くんの痕跡は一切見つからなかったのである。

事件の概要と不可解な点

  • 発生日:1989年(平成元年)3月7日 午前8時15分ごろ
  • 場所:徳島県美馬郡貞光町・親戚宅前の町道
  • 失踪者:松岡伸矢くん(当時4歳・左利き・身長110cm・右眉上に小さな傷跡)
  • 同行者:父・姉・弟・従姉妹

失踪の現場となったのは、町道の突き当たりにある、いわば「袋小路」のような位置だった。

この道は地元住民しか利用しない場所で、通り抜けはできず、外部の車が偶然通りかかることは考えにくい。

当時、近くの畑では農作業をしていた男性がいたが、不審な車両や物音などは目撃していないと証言。

また、周囲に目立った足跡やタイヤ痕、争ったような形跡もなく、叫び声もなかった。

これらの状況から「短時間で静かに連れ去られた」とも考えられたが、そもそも誰がどうやってそんなことを可能にしたのか、現実的な説明はつかない。

見つからなかった手がかり

警察と住民による山間部での捜索風景のイメージ画像

警察の捜索は早い段階から「誘拐の可能性」も視野に入れて行われたが、金銭目的の要求や脅迫などは一切なかった。

地元住民への聞き込みはもちろん、新聞・テレビでの情報提供も全国規模で行われた。

近隣の山や川、井戸や用水路なども徹底的に捜索され、神社の境内、空き家、物置に至るまで調べ尽くされたという。

しかし、それでも一片の手がかりも見つからなかった。

また、伸矢くんの家族が親戚宅に滞在していたことは、親戚間でしか知られておらず、第三者がそれを知って狙った可能性は極めて低い

この点も、「偶然通りかかった犯人」が犯行に及んだとは考えにくい要因の一つとなっている。

不審な電話と北朝鮮拉致説

曇り空の下で無人の海岸に残された足跡と沖に浮かぶ小型船のイメージ画像

事件から約1週間後、3月15日の夜。親戚宅に一本の不審な電話がかかってきた。

「お母さんですか?」と徳島弁の女性が話しかけ、直後に無言となり、受話器越しに何か物音がしたという。だが、そのまま電話は切れてしまった。

この電話は発信者不明のままで、警察も調査を行ったが有力な情報にはつながらなかった。

さらに、事件から1ヶ月後には、徳島県日和佐町(現・美波町)の弁天浜で「伸矢くんによく似た子どもを抱いた男性」が目撃されたという情報が寄せられた。

日和佐町はかつて北朝鮮の工作船が出入りしていた可能性が指摘された港町であり、この目撃証言により「北朝鮮拉致説」がささやかれるようになった。

実際、公安関係者の一部もこの説に注目し、特定失踪者問題調査会などの機関でも「拉致の可能性を排除できない」として調査対象となっている。

とはいえ、証拠がない以上、あくまで「可能性のひとつ」としての扱いにとどまっている。

全国からの目撃情報、そしてDNA騒動

事件が報道されると、全国から「この子に似ている子を見た」という目撃情報が数多く寄せられた。

スーパーや駅、児童相談所、海岸や公園など、さまざまな場所で「似た子を見かけた」との通報があったが、いずれも確認の結果、別人と判明した。

中には、実際の家族と再会した別の迷子だった事例もあり、情報の精度はばらつきがあった。

2018年には「和田竜人さん」と名乗る青年がテレビ番組に登場し、「記憶喪失の状態で保護された」「幼い頃に誘拐されたかもしれない」と語ったことで、大きな話題を呼んだ。

SNSでは「この人は松岡伸矢くんではないか?」と騒がれたが、DNA鑑定の結果、別人であることが確認された。

それでも、この一件は事件を知らなかった世代にも大きな関心を呼び起こし、再び世間の注目を集めるきっかけになった。

36年後の現在も、解決を願う声

2025年現在、事件から36年が経過している。

現在も徳島県警および特定失踪者問題調査会などの公的機関では、伸矢くんの情報提供を呼びかけている。

行方不明者リストや、拉致の可能性を排除できない特定失踪者リストにも名を連ねており、記録は風化を防ぐ形で保持されている。

家族はテレビ番組やネットメディアを通じて繰り返し情報提供を呼びかけ、手がかりが得られることを信じている。

インターネット上でも再調査を願う声は根強く、事件を扱ったYouTube動画や記事は現在でも多数公開され、コメント欄には「何とか見つかってほしい」と願う声が絶えない。

わずか40秒──「現代の神隠し」の真相は

子どもの足跡が途中で途切れた静かな田舎道と霧に包まれた風景画像

この事件は「神隠し」という言葉がもっとも似合う失踪事件の一つだろう。

大人でも難しいような“完全な消失”を、たった4歳の子どもが何の音もなく、誰にも見られずに成し遂げたというのは、現実とは思えない。

誰かに連れ去られたとするなら、なぜ誰にも気づかれず、音もなく、痕跡も残さずに可能だったのか?

あるいは、自分でどこかへ行ったとするならば、なぜ周囲の誰一人として彼の姿を見かけなかったのか?

合理的な説明がつかないからこそ、「現代の神隠し」と呼ばれるこの事件は、多くの謎と不安を残したまま今も語り継がれている。

松岡伸矢くんが無事に見つかること、そしていつか真相が明らかになる日が来ることを、心から願わずにはいられない。

参考文献・出典

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